認めてくれた人









『サスケは俺の自慢の生徒だよ』

そう言ってくれたのはあの人が初めてだった。
”うちは一族”でも、”うちはイタチの弟”でもなく、”うちはサスケ”として認めてくれたのは、
あの人が―――






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「お〜い、サスケー!」

名を呼ばれて振り返れば、
そこにいたのは恩師と現上司だった。
在学当初から何も変わらないその笑顔にサスケは小さく頭を下げた。

「こんな所で会うなんて奇遇だな、お前も夕飯の買い入れか?」

しかし、そういう彼の手には何も持たれておらず、代わりにビニール袋を下げていたのは横で眠たげに立っている上忍だった。

「………」

別に隠す必要などない。サスケはコクリと頷いた。
しかし、その手には何も握られていないことにイルカはニッと笑う。

「なあ、サスケ」

サスケの生い立ちは彼が自分の生徒になった時点で粗方知った。
あの事件以降現在も、うちはの家で独り暮らしていること。そして、そこで自炊をしていることも。

「お前さえよければ、これから俺の家に来て一緒にメシでもどうだ?」
「―――イ、イルカ先生ッ!?」

それに驚いたのは、サスケではなくイルカの横にいたカカシだった。
正確に言えばサスケも少しなり驚いた。しかし、カカシの方がサスケのそれよりも早くそして、大きかった。この時ばかりはいつも眠たそうなその唯一伺える右目も驚きで見開かれている。
どうやらサスケを夕食にご招待はイルカの独断と偏見で今この場で決定されたことらしい。

「だって、カカシ先生。折角のお鍋ですよ、大勢で食べた方が楽しいじゃないですか?
――あ、何ならナルトも呼びましょうか。あいつ、ラーメンしか食わないから、たまに栄養のあるもの食わせてやらないと…」
「ナルトまで…、ですか…?」

一体何を考えていたのかは知らないが傍目にもよく分かるほど落ち込むカカシに、こちらは気付いていないのだろうか。
イルカは視線をカカシからサスケに移し、どうだ?と少しだけ首を傾げた。

「――まだ、買い物はしてないんだろう?」
「………」

確かにまだ買出しはしていない。
こちらを見る視線にサスケはしばしのあと、

「……お邪魔します」

と応えた。
その瞬間、ニコリと笑うソレと共に殺気にも似た禍禍しい視線を感じ取った気がしたがそれは敢えて無視することにして―――



         +++



「なぁーんで、任務終わってもお前らと一緒に居なきゃなんないのかねー…」

視線は台所に消えたあの人を追いながら、しかし、その人には聞こえないようにポツリと呟く。
サスケはその呟きを記憶の中から抹消する事だけに留めて置いた。
どうせ何を言っても無駄なのだから、口を挟んだところで意味など無いことを彼は既に知っている。

台所では家主と、彼等がここを知る前から常連だったのだろう金髪の少年が着々と今晩の夕食の支度を進めている。
生憎とそれほど広くはの無い元担任の家は台所など2人で立てばもう満員。きっとソレを知っているからこそ、ナルトはさっさと台所に向かったに違いない。そこを占領すれば、誰よりもイルカと長い時間を共有することが出来る。

「めくるめくイチャパラが〜…」

意味の分からない単語をほざく上司は無視。
しかし、だからと言って何かするわけでもなくサスケの視線も自然と台所に姿を消したあの人の姿を追っていた。
たまに垣間見える黒い尻尾とそれにまとわりつく金髪に僅かな疎ましさを覚えながら……

「……渡さないよ?」

それは唐突だった。
眉を顰めて声の主に視線を映せば相変わらず見えない表情で笑っていた。

「……何のことだ」
「アノ人のこと。いくらお前等が可愛い教え子でもこれだけは譲れないかーらね」
「てめぇこそ、イルカ先生泣かしたら承知しないからな…」

「泣かせないよ…」

「テメェの言葉は当てにならないからな。
先生を少しでも傷つけてみろ、多分、敵に回るのは俺たちだけじゃないぜ……」

「精々精進します」

「フン…」






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あの人を悲しませたりしたら許さない。
あの人は笑顔が似合う人だから。

『お前はエライよ。今までお前が立派な成績を残してきたのは”うちは”だから、とかそんなんじゃない。
うちはサスケが努力した、そのの結果が実を結んだんだ。いつも頑張ってたもんな、お前。
――サスケ、サスケは俺の自慢の生徒だよ」

だから、胸を張って生きろ。


それを聞いたのは偶然。

『あの”うちは”のガキ、スゲェなやっぱ才能の差かよ…』
『いいよなぁ、俺ももっと優秀なところに生まれたかったもんだぜ…』

何も知らないくせに。
俺の何を知ってるって言うんだ。
ただ、”うちは”というだけで、どうして全てを蔑ろにされなければならない…?

悔しくて、しかし、その場から動けなくて……

そんな時だった、あの人が不意に頭を撫でてくれたのは。
いつのまに背後に居たのか、それは分からなかった。アカデミー生と中忍の差を見せ付けられた気がした。
でも、

『サスケは俺の自慢の生徒だよ』

その一言が嬉しくて、


あの人は俺を初めて『俺』としてみてくれた人。
あんな優しい人を傷つける奴は許さない。

























サスイルを書こうとして撃沈…
所詮カカイル好きーなんです
サスケむずい、中途半端だなぁ〜
イルカ先生は”うちは”のサスケではなく、
"サスケ"を見てくれる人だと思うわけで…

20040706










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