年に一度の記念日。

あなたと一緒に過ごしたいと思うよ。







・+*+*+・ちいさな はっぴぃばーすでぃ・+*+*+・








本当は色々考えてたんだ…

お子様達との任務が終わったら、アカデミーが終わる頃合を見計らって迎えに行って、一緒に帰って。その道々、少し奮発して上等の酒と、甘いものはあんまり得意じゃないけどやっぱり定番のケーキは欠かせない。
いい年した男が二人でホールケーキを食べるのは、さすがにいささか罰ゲーム的な匂いがするからカットケーキを何点か買って。料理は、いつもは作って貰ってばかりだから、この日くらいは俺が作ったっていい。
きっとあの人のことだから、少しビックリするかもだけどきっとはにかんだ笑顔で喜んでくれるに違いない。

そんな事を想像しながら、指折りこの日を待っていた。
今までこんなに何かを待ちわびた事なんて無かったし、誰かの為に何かをしてあげたいなんて思ったことも無かった。

でも、あなただけは…




『スミマセン、夜勤が入ってしまいました』

『あー…、それじゃあ仕方ない、ですね…』




分かりますよ、そりゃ。
俺だってもう充分に分別のつく大人です、仕事じゃ仕方ない、って分かってます。

貴方に格好悪いところ見せたくないからアッサリ引き下がりましたけど、




けどね、



我慢しようと思ったけど、
やっぱり無理。



俺は、今日この日をあなたと一緒に過ごしたいです。







*** *** ***







正直、予想外だった。
……もっとゴネられる事を覚悟してた、って、バレたらあの人はどんな顔をするだろう。

さすがにお互いに大人だった、って事だろうか。

でも、少しだけゴネて欲しかったかな、とも思うのはきっと自分の我侭。
今更盛大に祝うほどでもない、と思う反面、まるで自分のことのように喜んでくれるあの人の姿が何だか嬉しくて気恥ずかしくて、でも、幸せで。


「悪いこと、したよな…」


面と向かって言われた訳ではないけれど、きっと色々考えてたに違いない。
自分の家のカレンダーだけでは飽き足らず、ウチのカレンダーにまでデカデカと赤丸で印をつけてくれた位だ、よっぽど楽しみだったのだろう。
それこそ、当人よりもずっと…。一体どっちが当事者なんだか分かったもんじゃない。

だけど、そんな姿すら愛しくて。
あの人程じゃないけど、実は自分も少し浮き足立っていた。
カレンダーを見て残りの日数をを数えるなんて行為、もうしなくなって随分久しい。でも、大きな赤丸が視界に入る度に、不思議と心が弾んだ。




でも、仕方ない。




こうして急遽、担当にあたることは結構ザラにある。
独り身の哀しいさだめと言えばそれまでだが、それでも自分はアカデミーがある分優遇されている方なのだ。贅沢は言えない。

夜勤を告げた時の随分とアッサリした引き際に、きっと内心では大きな葛藤があったに違いない。申し訳ない、と素直に思う。別日に埋め合わせも考えたが、でも、コレばかりはそういうのも違う気がして。



とりあえず、四ヵ月後。



まだ少し先の話ではあるけれど、四ヵ月後の15日は必ず空けておきますから。



今この場に居ないあの人に向けてこっそり謝罪する俺は、少しズルいのかもしれない。







*** *** ***







「イルカせんせ…」
「カカシ、さん?」


慣れ親しんだ気配を探り出すなんてのは、いとも容易い事。
昼間の喧騒が想像出来ないほど静まり返ったアカデミーの校舎内、一部屋だけ明かりが灯されていた―――職員室。そこに目当ての人物を見つけて、カカシは少し控えめなノックと共に声を掛けた。

ドアの隙間から顔を覗き出せば、少しだけ驚いた表情の、愛しい人がそこに居た。

「どうしたんですか、こんな時間に……」

普段なら首元までしっかり閉められているベストのファスナーも、今は自分一人だけという空間がそうさせるのか少しだけ寛げられている。

急遽割り振られた夜勤当番については、昼のうちに話がついていた。
夜も更けたこの時間に、関係者でもないカカシがアカデミーを訪れる事はそうそう有り得ることではない。これが例えば、カカシが任務明けでであるならば、受付所に向かう途中とも言えなくは無い。しかし、今日カカシに夜間に及ぶ任務が無いことはイルカも知るところだ。そして何よりここは職員室。
突然の訪問にイルカが驚いたのも当然といえば当然のことだった。


しかし、入り口から顔を覗かせたは良いが一向に入ってくる気配の無いようで。
ただ様子を伺うように立っているカカシを迎え入れるかのように、イルカは席を立った。自分から動かねばいつまでも入り口に立っていそうな、そんな気がしたから。

「何かあったんですか?」

「……えっと、」

面と向かって問えば、返ってきたのは何とも歯切れの悪い言葉。唯一伺える右目はさっきから挙動不審よろしく全然関係ない方向に右往左往している。

……?

一体どうしたというのか、
カカシのおかしな様子にイルカは胸のうちだけで首を傾げた。

「あの、取り敢えず中に入りませんか…?
俺しかいないし、別に入ったら駄目って訳でもないですし」

「あ、ハイ。お邪魔します」

カカシを中へ促しながら、
取り敢えず給湯室でお茶でも用意しようかな等と考えているときだった。

カサリ、と小さなビニールの掠れる音がした。

「……?」

その音の主は言うまでも無くカカシ。
入り口で立っているときは丁度陰になっていた為か気づかなかったが、何故かコンビニの袋をぶら下げていた。
そのイルカの視線に気が付いたのか、カカシが少し苦笑気味に空いている方の手で後頭部を掻く。



「その…本当はね、我慢しようと思ったんです。
でも、やっぱり何かしたいな、と思って。何にも出来ないにしても、せめて一緒にいたいな、と思ってしまいまして……。
その、大したものじゃないんですけど―――」


そう言って差し出されたビニール袋。
中には―――


「ケーキ…?」


ショートケーキとチョコレートケーキがセットになった小さなパックが一つ入っていた。







「一緒に、食べませんか?」

「……カカシさん」







照れくさそうに笑うカカシに、
イルカは一瞬驚いたような顔をして、

でも、その次の瞬間には本当に嬉しそうに微笑んでいた―――――

















その後、給湯室にあった緑茶を出して、
ケーキと緑茶の組み合わせがどうなのかなんてのは、カカシもイルカもよく分からなかったけれど、決して高価なものではないけれど、




「お誕生日、おめでとう―――イルカ、先生」

「はい。ありがとうございます」




二人にとって今まで食べたどのケーキよりも美味しく感じられたのは言うまでも無い。























イルカ先生、お誕生日おめでとう!!

20110428〜20110601までフリー配布でした
お持ち帰りして下さった方ありがとうございました

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