再会の刻
イルカ先生、何やってるんですか?
――ああ、カカシさん。
珍しいですね、あなたがアカデミーに顔を出すなんて…。
先生の帰りが遅いので迎えにきてしまいましたーv
わざわざ、すみません。
いいえ、俺が好きでやってる事ですから気にしないで下さい。
それより、何をしてるんです?笹に紙なんかぶら下げて….…
今日は七夕ですからね、授業中に短冊を作って皆で願い事を書いたんですよ。
折角だから全部飾っちゃおうと思いましてね。……あ、もしかしてご存知ありませんか、七夕?
はぁ、すみません。
別に謝る必要なんてないですよ。
俺たちが子どもの頃なんて空を見上げる余裕さえなかったのが実情ですし、あなたの場合は俺なんかより状況はもっとずっと過酷だった訳ですから。
……イルカ先生。
でも、今は違いますよね。
こうして静かに空を見上げることも出来る。今からでも遅くないんですよ、全然。知らなかったことは、これから知っていけばいいんです。
だから、そんな顔しないで下さい。
………。
七夕っていうのは、別れ別れにされた恋人達が年に一度だけ再会を許される時なんですよ。
え…?
夜の空には「天の川」と呼ばれるそれは大きな星の川があるんです。
そして、その川の東のほとりに織姫という名の機織を生業とする美しい娘さんが住んでいたんです。しかし年頃にも拘らず化粧もせず、ただ機を織るばかり…
それを見ていた神様…だったかな?がその恋もしない織姫を不憫に思って、川の西に住む牽牛という牛飼いの青年と結婚させることにしたんです。
そうして始まった新しい生活だったんですけど、牽牛と出会って以来、織姫は機を織るのを止めてしまったんです。
2人は遊んでばかりいて、最初は新婚と多目に見ていた神様もこれではいけない、と思ったんでしょうね。織姫と牽牛を再び天の川の西と東に引き裂いてしまったんです。.離れ離れになりたくないと思ったとしても織姫も牽牛も神様には逆らえませんし、どうすることも出来なかった。
でも、神様は言ったそうです。
「お前達がもし、これから心を入れ換えてきちんと仕事に精を出すなら年に一度、再会を許してやろう」と。
以来、織姫も牽牛も互いにその年に一度の再会を夢見て仕事に励んだそうです。
―――で、その年一回再会の夜が今日。七夕、と呼ばれる日なんです。
そして、この七夕に笹にこうやって短冊に願いごとを書いて飾ると願いごとが叶う、と言われてるんです。
へぇ…
でも、その神様ってのも随分と勝手ですねぇ〜
そうですか…?
そうですよ。
だって、織姫と牽牛でしたっけ?そいつらを勝手に結婚させた挙句、別れさせちゃうんでしょ。
信じられません、身勝手にも程がある!
なんであなたが怒るんですか……
だって、もし俺がイルカ先生と別れさせられたらキレます!!
は?
冗談じゃないですよ!
っていうか、その牽牛って男も大したことないですね。神様なんかに言われたくらいで……
俺だったら、その星の川を泳いででもイルカ先生を迎えに行きます!
何言ってるんですか、あなた……
だって、そうでしょ?
イルカ先生は俺に年に一回会えるだけで満足できますか。
俺には出来ません、絶対に無理です。
今の状況でも物足りないのに、年に一回しかあなたに会えないなんて拷問以外の何でもありません!!
……ま、カカシさんらしい、と言えばカカシさんらしいですね。
あ、イルカ先生、何笑ってるんですか?
俺は本気ですよ!
てゆーか、あなたの場合「別れろ」って言われた時点でトンズラしてそうですよ。
2人で愛の逃避行ですか?
う〜ん、それもいいかも。そうですね、俺だったらイルカ先生攫って逃げちゃうかも。
何言ってんですか。攫われませんよ、俺。
え…
だって、俺も一緒に逃げますもん。
俺だってカカシさんと別れろって言われた時点で、そいつ殴って一緒に逃げます。
殴っちゃうんですか?神様を?
ええ、殴りますよ。
俺とカカシさんの仲を裂く不逞な輩は神様だろうか一発殴ります。
あーもうっ、イルカ先生最高!!大好き!!
あ、ちょっ、離して下さいよ!カカシさんッッ!!!//////
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「……でもね、俺、本当は少し羨ましかったんです」
そんな話をしたのはいつだったか。
バカみたいな話をして、一緒に笑いあって……
短冊に願いごとは書かなかったけれど、きっと2人とも願っていたことは一緒。
キラキラと輝く満天の星空。
織姫と牽牛は今年も再会を果たす事が出来たのだろうか?
空を流れる雄大な天の川を彼らは無事に渡ることが出来ただろうか?
「―――だって、彼らは年に一回しか会えないですけど…。
それは凄く凄く寂しくて、辛いかもしれないけど、それでも、彼らは確実に毎年会えるんです。絶対的に交わされた約束だから……」
絶対的な約束。
自分達には有り得ない。
時に身を置く人間だから、命を賭する忍びだから、自分達には有り得ない不変の、違えることのない約束。
「いつになったら、俺たちもう一度会えるんでしょうね…?
……会いたいです。ねえ、会いたいですよ、あなたに。どうしたら、あなたにもう一度会えますか…?」
物言わぬソレに、つぅ、と頬を冷たいものが伝う。
彼の痕跡は一切残されていない。
唯一残されたのは、英雄としての彼。刻まれた、その名のみ。
「逃げるって言ってたじゃないですか、俺を攫って、逃げてくれるんじゃなかったんですか?
確かに俺は自分で付いて行くって言いましたけど…、でも、あなた、どうせ何だかんだ言って一緒に逝くのは許してくれないんでしょ。
だったら、本当に連れてってくれれば良かったんだ。
……こんなことを思うなんてね、俺らしくないです。
ナルトだっているし、アカデミーの生徒だってまだまだ見守っていきたいし、教師の仕事だって全うしたいと思ってる。
―――でも、あなたがいないと駄目なんですよ。穴があいちゃったじゃないですか、心に。
……全部、全部、あなたの所為ですよ」
慰霊碑の前で、
イルカは静かに涙を流す。
ねぇ、あなたに、会いたいんです。
―――――カカシさん
オチ、暗ッ!!
七夕になにをやっとるかな、私は…
しかも、微妙に一日ズレ
(北海道の七夕は8/7)
20040808