「だからって、医療班まで振り切って来るバカが何処にいるってんだッッ!!!!!」
まさに、烈火の如き怒り。
怒髪天とはこういうことを言うのだろう。
……とカカシは縫い付けられたベットの中でぼんやりと考えた。
「……だって、」
「だって、じゃありません!!」
ピシャリ、と言い切られてカカシはイルカに気付かれないように苦笑した。
既にお説教モードに切り替わってしまっているイルカには、誰も適いはしない。ここは甘んじてお説教を受けるしかないのだろう。
「…あなた、何考えてるんですか?」
はぁ、と溜息を吐くイルカにカカシはおや、と思う。
今の自分は怪我人なので、さすがに拳骨を食らわされるということはないだろうが、もっと盛大に怒られるかと思った。
ここはイルカのアパート。
カカシがここを最後に訪れたのは任務前日だったので、一週間ぶりとなる。
一週間前と何一つ変わらない、イルカの温かい雰囲気に包まれて、玄関の扉越しに彼の温かいでも少しだけ焦ったような気配に安心してカカシは意識を失った。
意識を失うほんの瞬間、イルカの匂いを感じながら……
そうして、気がつけば身体は包帯でグルグル巻き。
彼の匂いで溢れるベットに横になっていた。
目覚めて、開口一番に「何やってんだ、アンタ!」と怒られ、理由を言えばやっぱり怒られた。
だって、還りたかったんだ。
貴方の傍に。
約束だったから…
貴方に嫌われたら、今の俺は生きていけないから…
「カカシさん、俺、今ものすごく怒ってるんですよ?」
―――なのに、なにアンタは笑ってんですか……
呆れたように呟くイルカに、カカシは肩を竦めた。
自分では笑ってるつもりなんてなかった。
「あ、スミマセン。笑ってましたか…?何か、イルカ先生の顔見たら嬉しくなっちゃって…
帰って来れたんだなぁ〜、と思って。俺、約束ちゃーんと守りましたよ?」
「………」
今度こそ、本当に呆れた。
イルカは肩に圧し掛かる疲労感やら焦燥感やらを払拭すべく、カカシを再度睨み上げる。
本当に、この上忍は何を考えているのだ?
久し振りの高位任務に出て行ったのが一週間前。
期間は一週間。だから、カカシは期日通りに帰ってきたといえる。しかし、問題はその帰還した時の彼の状態だった。
昨日の夜半、外に見知った気配を感じて、でもその気配が余りにも弱弱しすぎて慌てて玄関に向かったイルカは目の前の光景に驚愕さえ覚えた。
いつもの飄々とした形は姿を潜め、それはまるで瀕死のソレそのもの。一瞬、ニコリと微笑んで彼はその場に倒れたのだ。
イルカはその瞬間戦慄した。
自分より上背のある彼を何とか支え、ベットに横にしてそこから先のことはあまりに慌てていてよく覚えていない。
もしかしたら、泣きそうな顔さえしていたかもしれない、と冷静になって思い返す。
失いたくなかったのだ。
もう、大切なものを二度と。
「俺達、約束しましたよね?ずっと桜を一緒に見るんだ、って」
その約束はイルカだって覚えてる。
確かにそう言った、いつまでも傍に居て下さい、という願いも込めて。
聡い彼のことその真の意味も捉えているのだろう。
しかし、だ…
「ええ、約束はしました。
だからって任務で負った怪我の治療もしないで何やってるんですか」
今回の任務には後日医療班が送り込まれた。
本来ならそこで怪我を治療し、そこで初めて帰還する、ということのはずだった。
「だって、そうしたら帰ってくるの遅くなるじゃないですか。早く、イルカ先生に会いたかったし…。まあ、里に帰るくらいまでなら体力もチャクラも持つんじゃないかなぁと思って」
テヘ、と笑うカカシに、イルカは今度こそ殺意さえ湧いた。
そんな怪我まで負って、それすらも無視して……
今回はイイ。結果論だがカカシは事実、無事に里に辿り着きあまつイルカ宅の前で倒れたのだから…
しかし、もしこれが…
「アンタ…、俺がどんな気持ちだったか分かってるのか…?」
「イルカ先生…?」
「血塗れの姿で、俺を見て微笑んで、その思った瞬間には倒れてて…
本当に心配したんだ!!また、俺の大切な人がいなくなっちゃうんじゃないかって!!血はなかなか止まらないしっ、アンタの呼吸は浅く苦しそうで!!!
―――あなたが、このまま、死んでしまうかと思った……」
「ぁ……」
つぅ、とイルカの頬を伝うそれにカカシは愕然とした。
泣かしたかったわけじゃない。悲しませたかったわけじゃない。ただ、自分が会いたくて、会いたくて…
「ごめ、んなさい…、イルカ先生」
「もし、途中で倒れたらどうするつもりだったんですか…?
今回は里の中――俺の家の前だったから…、でも、もし全然違うところで倒れてたらどうするんですか?こんな酷い傷を負って…
俺は確かにあなたに帰ってきてください、と言いました。それは嘘でも偽りでもない、俺の本心です。
でも、無茶をして欲しいわけじゃない、あなたをこんなに無理に突き動かすものならあんな約束反故にして下さい。昨日のようなことは二度とゴメンです…」
「や、やだ!!
約束を反故にするなんて言わないで下さい!俺の還る場所はあなたの横しかないんです、そこだけなんです!
……俺が還りたいと思う場所は。
もう無理はしません、約束します。――だから、」
「カカシさん……」
「……ごめんなさい、イルカ先生」
抱きしめたかった、強く強く。
俺は大丈夫だよ、と。今や強く鼓動を刻むその音を聞かせてあげたかった。
動かない、身体が恨めしい。
嗚呼、どうして俺はちゃんとあの場で治療を受けてこなかったんだろう…
大丈夫。
俺はちゃんと生きてます。
あなたを残してなんか、絶対に死なない。
約束。
必ず、俺の元に帰って来てください。でも、お願いだから、無茶はしないで……
約束。
必ず、あなたの元に還ります。そして、二度とあなたを悲しませることはしません……
「イルカ先生」
「何ですか?」
「これが治ったら、桜、見に行きましょうね」
「そうですね」
実はカカシ先生生きてましたーってことで
管理人自身があまり死にネタ得意でないので。
読む分には全然イケるんですけどねー…
無茶しちゃ駄目です、カカシ先生
あんまりギャグテイストにならなかったな…
↑したかったらしい
20040703