罠を張ろう、
アンタがオレを好きになるように。

罠を張ろう、
そっとアンタが気付かないように。

何気なさを装って……

罠を張ろう。







= 罠 =









「イルっカせんせ〜vv」
「カカシ先生。任務お疲れ様でした」

ペコリと頭を下げて、報告書を受け取る。
その度に揺れる黒い尻尾にカカシは目を細めた。

「…あいつら、頑張ってるみたいですね」
「ええ。文句言いながらも何だかんだ言って一生懸命ですよ〜」

報告書を見ながら口の端を少しだけ上げて、手元から巣立った教え子達の姿に思いを馳せながら微笑むその姿に、囚われたのはいつの頃だったか。芯の強い真っ直ぐな、でも、とても優しくて温かいひと。

「イルカ先生、お仕事まだかかるんですか?」
「いえ、あと半刻もすれば終わりです」
「じゃあ、夕飯でもご一緒にどうですか?手頃でイイ店見つけたんですよーv」

伺うカカシに笑って頷くイルカ。

既に日課となったやりとりに、最初は驚いていた周囲も今ではすっかりこれが当たり前と云わんばかり。
これはかなりの進歩だ、とカカシは思う。

イルカとの出会いは今の部下が切っ掛け。
初めて自分の認定する合格ラインに到達した彼らは下忍に合格したことをアカデミーの恩師に報告したいと言った。それに同行したのは単なる気紛れ。でもその気紛れこそが運命なのだとカカシは確信していた。
最初は別に何の感慨も沸かなかった、ただのアカデミー教師。多分、相手もそんなもんだろうと考えている。
しかしカカシはその認識を瞬時に塗り替えられることとなった。

場所はアカデミー。
ちょうど帰宅の時間にぶつかったらしく校門の前で鉢合わせて、
その姿を目敏く発見して飛びついていくナルトに追い掛けるサクラ、あのサスケまでもが少し足早に彼の元に向かうその姿に少しだけ驚いた。
とても慕われているのだろう、というのが見て取れるその姿。
身振り手振りと身体全体を使って大仰に話し掛けるナルトの姿に目を細め、嗜めるサクラに笑いかけ、付かず離れずの距離を保つサスケを気遣うように頭を撫でる。

そして、ナルトが自分を指差して、彼の視線がこちらに向かう。

―――あ。

その笑顔に捕まった。



足繁く受付に通い、
教え子には悪いと思いつつもカカシは彼らを山車に何度ともなくイルカを飲みにも誘った。
自分達の階級差は明らかで、最初の頃のイルカは緊張でガチガチだった。しかし、それも幾度となく飲みに行くうちに軟化していった。
徐々に見えてくるイルカのプライヴェートな部分にカカシはらしくもなく喜んだ。
ほんの些細なこと。それはイルカの一人称が「私」から「俺」に代わったことだったり、話題が生徒中心でなくなったり……

イルカの笑顔が好きで、大好きで、
彼が笑えばとっても心が温かくなる。

でも、
と、カカシは思う。

出来ることならその笑顔を自分に向けて欲しい。
自分のことを思い返して彼が笑顔を浮かべてくれたらどんなに幸せだろう。

俺は貴方がこんなに好きで、
でも、貴方は俺のことをどう思ってるの?







ねぇ、イルカ先生。俺のこと、好き?




























「どうかしましたか、カカシ先生?」
「え?」

覗き込む黒い2つの双眸に自分の銀色が映りこむ。
それだけで、嬉しいと思う自分の心はもう重症。

「ぼうっとしてらっしゃいましたよ…?
あ、もしかして任務でお疲れでしたか?だったら今日はさっさと切り上げましょうか」

小首をかしげて、ハっと我に返るその表情はクルクルと回る。見ていて全然飽きない。
カカシはニコと笑って首を振った。

「大丈夫ですよ〜、ちょっと考え事してました。スミマセン、折角イルカ先生と楽しく飲んでる時に…」
「いえ、それは別に――」

ま、考えてたことも貴方のことなんですけどねぇ〜、
とはさすがに億尾にも出さず、カカシはコップに少しだけ残っていた酒を飲み干した。

そして、もう一度イルカを見る。
受付やアカデミーではきっちり着込んでいるベストも今は少しだけ寛げて、アルコールの所為で僅かに上気した頬。
やっぱり好きだな、と思い、同時に、好きになって欲しいな、と思う。


「…カカシ先生、何か悩んでらっしゃるんですか…?
俺でよければ、…って言うのもおこがましいですね。でも、話せば楽になることもありますし…」

「イルカ先生優しいです〜」

「いえ、そんな……」


でも、きっと貴方は他の誰かがそんな風に悩んでいても同じことを口にするんだろうね。

だから、


「俺、イルカ先生大好きですよv」


少しは俺を意識しなさいよ。


「俺も、カカシ先生のこと好きですよ」


ほらね、やっぱり。
――でも、これでいい。

俺の「好き」を貴方の「好き」に摩り替えるから。
貴方が悪いんだよ。俺を「好き」って言ったから。




ゆっくりゆっくり、貴方が気が付かないうちに、俺の「好き」を貴方の中に流し込んであげる。





そうしたら、きっと貴方も俺の気持ちが分かるから…

























予定してたものと随分違うモノが出来ました;;
イルカ先生出番少ない…(涙

20040707










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