ユダンタイテキ
ふ、と突然沸いた人の気配。
何事か、慌てて振り返ってみれば――――
「……んっ!?……んん〜〜〜!!!!」
「っは、んぁ…っふぅん」
急な事で酸素が回らない。
何をされているのか、唐突なことで脳がそれを理解するまで数秒
漸く回転し始めた頭で自分の置かれた現状を理解したイルカは元凶に向かって胸を叩く。
これ以上はマズイ。
何がマズイと問われると応えにくいが、とにかくこの状態はヒジョーにマズイ。
抗議の意思など疾うに理解してるだろうに、
一向に手を緩めようとしないその相手にイルカは手加減を止め、全力を持ってその身体を突き飛ばした。
「一体、何考えてるんですか!!アンタは!!!!」
「エヘ、ただいま帰りましたvv」
「エヘ、じゃないッッ!」
怒鳴ったイルカは不覚にも少しだけ体温上昇してる自分に気が付いて思わず苦い表情を浮かべた。
はたけカカシ。
里一のエリート忍者。コピー忍者。千の技を持つ男。
彼を彩る異名は数あれど、今ここにそれを髣髴とさせるような雰囲気は微塵たりともありはしない。
人の背後に現れたかと思えば、いきなりディープなキスをぶちかます非常識極まりない男にイルカは持ったお玉もそのままに肩を怒らせる。
「だって、久し振りなんですよ〜?
やっぱり任務明で心身共に疲れている時にはコイビトの熱〜いキスでお出迎えでしょう」
「何言ってんだか……」
2週間の任務。
確かに長くないとは言えない、久し振りの再会だイルカとて待っていなかった訳ではない。しかし、不意打ちをかける必要性がどこにあるというのだろうか。『コイビト』としての自覚があるのなら、少しくらい常識的に玄関から呼び鈴を鳴らして入ってきてはどうなのか。
何もギリギリまで気配を消して入ってくる事などないではないか。
「早くイルカ先生に会いたかったってコトですvv」
「はいはい。それはドウモアリガトウゴザイマシタ」
「何か、その言い方冷たいですね」
「そうですか」
遣り取りするだけ疲れるだけ。
イルカは何がそんなに楽しいのかニコニコと笑うカカシに背を向け夕飯作りの続きを再開した。
本当はカカシが来る前に全てを終わらせておくつもりだったが、帰ってくる時間が思ったよりも早かった。
「―――イルカ先生」
「なんですか」
味噌汁を掻き回せば、まだその場から動こうとしないカカシから声を掛けられた。振り返りはしない。これ以上夕飯の支度に無駄な時間を掛けるのは不本意だった。
「いつも一人で飯作ってる時はこんな感じなんですか?」
「こんな感じ…って、どういう意味ですか」
「背後に隙アリ、みたいな?
――-イルカ先生、今、俺が真後ろに来るまで気がつきませんでしたよね?」
そりゃアンタが完全に気配を消せば、俺なんかにゃ到底見抜けないだろうよ!
思わずクサりかけたが、言葉にはせずに温かくなった味噌汁の火を止めた。
こういうのは相手にしない方がイイに決まっている。構って欲しくて言葉を羅列しているのは分かっているのだから。
過去、幾度とない言葉の応酬の中でイルカはだいぶカカシの性格を把握しつつあった。
「駄目ですよ、イルカ先生〜。
そんな隙だらけで誰かに襲われでもしたら!イルカ先生、人気者なんだから不埒なヤロウがいつ襲ってくるかわかりゃしない」
……そんなコト考えるのは広いこの世界でもアンタくらいなもんだよ……
どうもこの男は自分も同じ『男』であり、また『忍』であることを忘れているようだ。
確かに上忍でしかもエリートと称されるカカシには劣るかもしれないが、イルカとて立派な忍であることに違いはない。そうそう簡単に背後を取られたりするものか。
……もしかしてこの人、俺のこと見縊ってないか?
そう思った途端、何となくムクムクと悪戯心が身を擡げ始めた。いつもいつも驚かされてばかりでは此方としても面白いはずがない。
イルカはお玉を置いて、小さく息をついた。
偶にはこんなのもアリだろう。
「―――――カカシさん、」
「………はい?」
まさか返事が返ってくるとは思っていなかったらしい、
カカシの僅かに戸惑いを含んだ声色にイルカは胸のうちだけで苦笑する。
カカシの方を向き直ったかと思うと、
「え、ちょ――ッ、イルカせんっ――――ッッん!!!」
思いっきり胸倉を掴んで貪りつくように唇を塞ぐ。
時間にしてほんの数秒。
「イ、イルカせんせい……?」
突然の事で対処出来なかったのだろう。
珍しく顔を赤くして動揺を露わにしているカカシに、
「何事も油断大敵ですよ、カカシさん」
イルカのとどめの一発。
ニッコリと笑うその笑顔に言葉を失ったらしいカカシを見て、今度こそイルカは満足そうに笑うのだった――――――
似た話をお題でも書いてた事に
気付きました(ヲイ!
イルカ先生に最後の科白を
言わせたかっただけなんです
20041206