「………」

「………」

紙の上をペンが走る音がする。
淀みなく走り続けるソレをカカシは耳で追っていた。

一応手には常に携帯している「イチャイチャパラダイス」を開いてはいるものの、一向に目は字面を追わず手は止まったまま。

ソファに腰掛けて、
今だ自分に背を向けたまま仕事に勤しむ愛しい人の後姿を眺める。
既に職員室から人気が失せて久しい時間。本来の勤務時間は疾うに終了を告げている。しかし、彼の仕事がその終了時間と共に終わりを告げることは稀だった。

こうやって、待っているのも既に日課。
カカシとて本音は早く返りたいと思う。
勿論、少しでも多く一緒の時間を過ごしたいと思うこともあるのだが、何よりもこう連日の残業ではいつ身体を壊してもおかしくないではないか。教師として教壇に立ちながらの受付業務の仕事もこなす。そんな二束草鞋の生活で、いつ休息を取るのか。たまに本気で不安になる。

しかし、それと同時にこの空間がカカシはとても好きだった。

何をするでもなく、
ただ、一緒にいる。それだけを許された空間。

傍にいてもいい。

焦るでもなく、自分のペースで仕事をするその仕種は
自分を特別視しているでない気がして、何だか少し嬉しくてくすぐったい。


……って、言っても、
あんまり相手にされないのも寂しくなっちゃうんだけーどね。


構って欲しいけど、
構わなくて良いとも思う。


相対する思いに、カカシは独り苦笑した。
昔じゃ、こんなこと考えたことさえなかったのに。





「……カカシさん?」

気がつけば既にペンの走る音は止んでいた。
そして、振り向くのは愛しいその人。

「お仕事、終わりました?―――イルカ先生?」
「ええ。お待たせしてスミマセン」

「いいんですよ、俺が好きで待ってるだけですから。
それより、飯食いに行きましょう?お腹すいてるデショ。俺ね、この間手頃ないい店見つけたんですよ。」

「それは楽しみですね」



ニコリと笑うその笑顔が好き。
その笑顔が見れるなら、俺はいつまでも待ちますよ。
待ってる間だって全然辛くない。




そう、例えあなたが俺の方を見ていなくたって、
仕事に没頭していたって全然平気。

だって、あなたは俺の存在をあなたの中に認めてくれているんでしょ?
だったら、待つことなんて苦じゃないんですよ。

ね、イルカ先生?




並んで歩くイルカを見て、
カカシは誰に気付かれるでもなく小さく微笑んだ――――











この2人ビミョーにくっついてるのか
わからない;;

20040821 UP






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