| 宝探し |
| それを見たのはほんの偶然。 闇夜に紛れて今日も1人、顔も知らぬ輩の為に己の手を血に染めた。別にそのことについてどうこう考えるつもりは無いが、確かにこびり付いているだろう血臭を初めて煩わしいと思った。 (……あんなトコロでなにやってんだか……) 面の隙間から伺えた人影。 川縁でただ1人、呆として空を見上げる男。 括り上げられた黒髪が時折、緩やかな風に浚われて靡く。 忍び、であることに間違いはない。 ベストを着ているところからみて、それなりの腕はあるのだろう。 故に、カカシはそれ以上距離を詰めることが出来ずにいた。気配を悟らせないこと位、造作も無いが、僅かな血臭であっても気付く者は気付く。今、川縁に立っている男がどれだけの実力を兼ね備えたものなのかは知らないが、気付かれるわけにはいかなかった。 (……一応、極秘裏任務だしね) しかし、それにしても先程から全く動く気配の無い人影。 一体、何をやっているのか。最初こそ何かよからぬことを企んでいるのではないか、と勘繰ったりもしたが、一向に何のアクションも起こさない男の様子に、カカシはその可能性を抹殺した。 雲間に浮かぶ月が照らす光。 空を見上げて、彼(か)の地へ何を見るのか。 (かくいう、俺もこんなトコロで何やってるんだろうね) 何となく見つけた人影が気になって、気付かれないであろうギリギリの範囲まで近付いて、ただ、その動向を見守ること既に5分。 彼の行動もよく分からないが、自分の行動もよく分からない、と首を傾げる。 いつまでも、ここにいたって仕方ない。 任務完了の報告も実はまだしていないのだ、早くしなければまた火影にどやされる。 カカシは思いっきり眉間に皺を寄せてこちらを見上げる三代目火影の姿を思い返して、僅かにめんどくさそうな顔をした。自分の所属する部署は、一般の正規部隊とは少し事情が異なる。火影からのみの命で動く、暗殺戦術特殊部隊。通称、暗部。その正体を仮面で隠し、その身体を血で紅く染め上げながら闇から闇を渡り歩く、因果な部隊。 (ま、別に不穏因子でも無さそうだし …そろそろ、行っとかないとジーサンにどやされるな…) そう、踏ん切りをつけて立ち去ろうとした時、 (……!) 再び雲間から差し込んだ月明かりに、男が照らし出された。 初めて全てが浮かび上がるその姿。漆黒の髪と同じ、色をしたその瞳から流れ出る雫。一筋の道筋を辿って、静かに落ちていく様にカカシは息を飲んだ。 表情は無い。 ただ、静かに涙を流す。 それだけ。 もしかして、ずっとああして涙を流していたのだろうか。 考えてカカシは己の身体を言い知れもせぬモノに襲われた。 何故、そんな顔をして泣くのか。どうして、今、自分は彼の元へ行くことが叶わないのか。平気だと、声を上げて泣けばいいと、どうして言ってやることが出来ないのか。 見ず知らずの他人。 そんなこと、分かっている筈なのに…… (………) カカシはそのまま、その場を立ち去った。 今の自分が彼にしてやれることなど何もない。姿を、人目に晒すことなど出来ない暗部。血に染まった装束で、彼の前に姿を現して何になる。 そう、自分に言い聞かせる。 でなければ今にも飛び出して行きそうな、そんな衝動に身体の方が突き動かされそうだった。感情など、理性の檻で閉じ込めてこそ忍び。その自分が何たる体たらく。 「……クソッ」 忌々しげに呟くカカシだったが、 それでもその脳裏に焼きついて離れないのは、一筋の涙。 |
―― ドウシテ キミハ ソンナフウニ ナイテイルノ? ―― |
| ずっと、ずっと探していた。 以来ずっと。 忘れられなかった一筋の涙。 「あの、初めまして。俺、アカデミーであいつらの担当だったうみのイルカといいます」 「―――知ってますよ、イルカ先生。ナルト達から話は聞いてます。あいつらの担当師になりました、はたけカカシです。どうぞよろしく」 ああ、やっと見つけた。 ねぇ、アナタはまだ独りでああやって泣いているの? そこに俺を置いてはくれませんか? ―――――――イルカ先生 |
カカシが暗部を辞めた訳
20050505 UP