秘密基地

※長編SS「道ゆき」設定に基づいています



「ハタケ、早く!こっち、こっち!!」
「……一体どこ行くつもりか知らないけど、まだ遠いわけ?」

「あと、もう少し先っ」


いつもの場所でいつものようにイルカを待っていたら、息せき切って駆け寄ってきたイルカに突然腕を掴まれて連れ回されること数十分。
一体何をそんなに急いでいるのか、カカシは胸の内で首を傾げながらそれでもイルカに大人しく従った。先程から再三、目的地について尋ねているが色よい返事が返ってきた試しはない。「行けば分かる」「いいから」それの繰り返し。
意地でも教えないつもりだろう、イルカの頑固さは既に身に染みて分かっているカカシは早々に場所の確定を諦めた。

本音を言えば、イルカの走る速度など大した事は無い。実際、息が上がっているのはイルカだけで、カカシなんかは余裕の涼しい顔をしていた。
カカシが本気を出せば例えイルカを担いでいたとしても、今の倍以上早く目的地に着くことは可能だろう、

しかし…


イルカが場所教えてくれないんだから仕方ないじゃん?


間違っても教えてくれない事への八つ当たりなんかじゃない、と自らに言い聞かせて、カカシはイルカに掴まれた腕もそのまま、イルカの半歩後ろを彼の速度に合わせるようにひたすら走っていった。

丘から、里の繁華街を通って民家を抜ける。
位置としてはだいぶ里の外れの方まで来ているようだ。
イルカが一体何を考えて人気の無い里の外れまで自分を連れてきたのか、カカシにはさっぱり分からなかった。自分であったなら、任務に向かう途中通ることもあるかもしれないが、イルカがこんな所まで来ているだなんて。

……危なくないワケ?

いくら里内とはいえ、アカデミー生が独りで来るのは幾ら何でも……




「――――着いたッ!!!」




カカシがぼんやりと考えていると、
不意にイルカが足を止めて、ようやくコチラを振り返っていた。
カカシを見て、嬉しそうにニコリと笑う。
その笑顔を見て、そういえば、とカカシは思い返した。

今日はまだちゃんとイルカと面と向かって話ってしてなかった気がする。

「着いた、って…。一体こんな里の外れに何があるんだよ?――っていうか、イルカ、お前独りでこんなところ来たらアブないじゃん?」

里内でも、ここまで外れに来てしまったら何があるか分からない。

「…何で、別にアブなくないよ?父ちゃんも大丈夫って言ったし。それに、最初にココに連れてきてくれたの父ちゃんだもん」

ケロ、っと言ってのけるイルカにカカシは軽い頭痛を覚えた。いや、正確に言うとイルカに、ではなく、「父ちゃん」の方に、である。
一体何の根拠があって、平気と言い張ったのかあの男は。イルカの父親――オルカのイルカに対する親バカぶりはカカシも知るところだが、だからこそこういう所には連れ込まないのが本来ではないのか…?

「何考えてるんだ…」

どうも親バカになるポイントがずれている気がしてならい。


「それよりさ、ハタケ。こっち、こっち。そこからじゃ見えないってば」
「……?」

手招きをするイルカに促されるように、近付く。
そして、


「見てよ、ハタケ。凄いだろ!」


カカシは一瞬、言葉を失った。


眼前に広がる、オレンジ色の絨毯。本来の色は形を潜めて、夕日に染め上げられたソレは鮮やかな色で埋め尽くされていた。

「これ、…全部、ススキか…?」
「うんっ!」

眼前に広がる、広い広いススキの群集。


「去年さ、父ちゃんに連れて来てもらったんだ。綺麗だろ?この時期になるとこの辺一体ススキだらけになるんだって。何か、任務の帰りに見つけたんだってさ」

「イルカ、もしかいしてコレを俺に見せたかったわけ?」
「うん、そう。
ススキに埋もれてさ寝ッ転がって空見上げたら、すっごい綺麗なんだ。知ってた?夕日に照らされたオレンジ色のススキの穂がキラキラしてんだよ…ほら、コッチ!」
「――うわっ!ちょっ、おい!」

グイ、っと再びカカシの腕を掴んでイルカは思いっきりススキの中にダイブした。
その反動でカカシもススキの中に倒れこむ。

「空見てみろよ!」

促されて見た先には、
今まで見たこともないような風景。


ススキが光るところを、カカシは初めて見た気がした。


「ココさ、実は俺の内緒の場所なんだ。スッゴイ綺麗だからさ、誰かに教えるの勿体無くて…」
「いいのかよ、じゃあ、俺なんかに教えて」

空を見上げたまま、話し始めるイルカにカカシの視線が自然とそちらに移る。その視線に気がついたのだろう、イルカもまた、カカシの方に視線を移して、ニッ、と笑った。

「―――うん、ハタケならいい」
「…何で…」

「何でかな?よく分かんないけど、ハタケには見せたいと思ったから。だから、いい。――あ、でも、他のヤツには絶対内緒!俺たちだけの秘密の場所だからね!!」

「……秘密?」

「そ、絶対秘密」

確認のように念を押すイルカに、カカシは小さく頷いた。


「―――分かった。この場所は、俺とイルカだけの秘密な」

「そういうこと」



心底嬉しそうに笑うイルカにつられて、カカシの表情にも笑みが彩られる。







悪くない、イルカと2人だけの内緒の場所…。






***  ***  ***






「…ったく、いつまで経っても帰ってこないと思ったら。こんなところで何やってるんだ、お前らは。――ま、連れ出したのは十中八九、イルカの方だろうけどなぁ〜…」


いつまで経っても帰ってこない、息子を探しに来てみれば、


「風邪引いたらどうするつもりなんだか…」


ススキに埋もれて安らかな寝息を立てる影2つ。

オルカは「仕方ない」と苦笑交じりに、起こさないようにそっと影を抱えて、温かい夕餉をこさえて待っているだろう愛しい人の待つ我が家へと歩き出した――――――











久し振りにイルカ父!

20050221 UP






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