| 本能に従え |
| 「あの…一体、これはどういうことでしょう…?」 突然深夜の訪問者。 親しい仲ではないにせよ見知った気配に扉を開ければ案の定、そこには銀髪の上忍が立っていた。お互いに名を知り、顔を知り、握手を交わしたりもしたが、しかし、互いの家を行き来するほど親交がある訳でもない。 知人、という枠に収まるだろうその人――はたけカカシの姿にイルカはどうしたものかと考えた。 「俺の師が四代目だっていうのは、ご存知ですよね。イルカ先生?」 「ええ…」 どうにも会話が噛み合っていない気がする。 そんな事をのんびり考えながら、イルカは更に続くだろうカカシの言葉を待った。 「先生が言ってたんです。 後悔するくらいならやって後悔しろ、って。行動を起こす前から諦めていたんじゃ、何も始まりはしない。行動を起こして後悔するのと何もしないで後悔するのとでは、絶対に行動を起こした方がいいって」 「はぁ…そうですか」 なるほど、四代目の言っていることは分かる。 かくいうイルカもそう思っている節が合った。何もしないくらいなら、何か行動を起こして、それが例え玉砕するかたちであっても何もしないよりマシだと考えていた。 カカシが一体何を切っ掛けにそんな話を四代目としたのかは分からないが、その四代目の意見には賛同は出来る。 しかし、 しかし、だ。 「カカシ先生、一つお尋ねしても宜しいですか?」 「はい」 「その四代目の教えと、今俺がこうしてあなたに押し倒された挙句腹を弄られている状況は一体何の関連性があるんでしょうか…?」 そう、イルカは押し倒されていた。 体格などそれ程差はないのに上忍と中忍の違いだろうか、確りと押さえつけられた身体はその殆どの身動きを封じられて抵抗の術もない。 だが、自分でもどうしてここまで冷静でいられるのか分からないが、イルカは冷静に覆い被さるカカシを見つめていた。不思議と暴れようと言う気がしないのだ。 「俺、イルカ先生が好きなんですよ」 「そうなんですか、ありがとうございます」 「――で、出来ればお付き合いしたいなー…とか思いまして」 「俺、オトコなんですけど?」 「ええ、まぁ…その辺は俺も予想外でして。 最初は驚いたんですよ、自分でも。でも、やっぱり好きなんです…あなたのこと」 「えーっと…こういう行動に出るってことは、抱きたいってことで良いんでしょうか?」 「まぁ、そういうことになりますか。やっぱり好きな相手とはこういう事したいじゃないですか、でも、あなた簡単にはヤらせてくれなさそうだし」 「そりゃそうでしょうね」 「うん、だと思いました。でも、俺も諦めきれないんで…」 「こうして実力行使に出たと」 「何もしないで諦めるのは先生の教えに反するので」 ニコリ、と笑うカカシにイルカは呆れた。 何というか発想が変わっている。論理的には間違っていないのだろうが、人としての道徳が欠如している、とイルカは思った。 と、同時に、どうして自分が焦っていないのかも分かった気がした。 …あまりにも危機感がなさ過ぎる 「成る程、あなたの言い分は分かりました」 「え?ホント?じゃあ…ヤらせてくれるんですか?」 「まさか。生憎と俺は男に掘られる趣味はありません」 「えー?でも、俺としてはイルカ先生と寝たいんですけどねぇ…」 「別にあなたがそうしたいのなら構いませんよ?――ただ、後にカカシ先生は後悔することになると思いますけど」 「…それ、どういう意味?俺としては後悔しない為にこうしてるつもりなんですけど」 半ば言葉遊びともいえる遣り取り。 「だって、俺カカシ先生のこと嫌いになりますもん」 「え…?」 「俺、結構カカシ先生のこと好きだったんですけどね。残念です。 もう、二度とあなたとは口利きません。…そうですね、受付も外してもらいましょうか?そして、こうして家に来られても困るので…、ああ、そうだ。火影様のところにでも厄介になりましょうかね。――俺、小さい頃、三代目のお屋敷でご厄介になってたことあるんですけど、今なら木の葉丸もいるだろうし…」 「え?え?」 「俺、他人を尊重出来ない人って大っ嫌いなので」 キッパリと、しかし受付で見せるような全開の笑顔で言い放ったイルカに怯んだのはカカシだった。その隙を見逃す筈もなく――― 「え…っ、ぅわっ!?」 振り上げられた拳を避ける為、カカシは反射的に身を引いた。 残念ながら空を切ることになった拳にイルカは小さく小さく舌打ちして、しかし、自由になった身体を起こす。 「ったく、何考えてんですか。アンタ…」 「イルカ先生こそ、いきなり驚かさないで下さいよ」 「あなたの突飛な行動に比べれば可愛いもんでしょう。生憎とあのままヤらせる気はありませんでしたので、何もしないで諦めるのは俺のポリシーにも反しますから」 「ちぇー…」 口を尖らせる上忍に、イルカは脱力した。 どうやらここに来て随分と不毛なことを遣り取りしていた事に気が付いたらしい。 惚れた腫れたの話しにしては全てがおかしなことになっている。 まがりなりにも強姦されかけた筈なのに、落ち着いている自分もどうかと思うが、突拍子もないこの上忍もどうかと思う。 「カカシ先生…」 「はい」 「あなた、俺のこと好きなんですね?」 「ええ」 「そうですか。…俺もアナタのこと、嫌いじゃないですよ?」 「じゃあvv」 「――でも生憎と俺は、好き=寝る…って思考にはついていけませんのでお付き合いは出来ませんね。俺はもっとこう、飯喰ったり、他愛もない話をしたり、一緒にいる時間とかを大切にしたいので。あ、でもだからって、無理矢理に俺の意思を無視した行為に走ろうもんなら、即嫌いになりますので、その辺のご考慮宜しくお願いします」 一瞬嬉しそうに破顔したカカシを一刀両断切り捨てて、 イルカは爽やかな笑顔で微笑んだ。 その笑みがこれまた極上の笑顔で、カカシが見惚れたのかそのまま呆ける。 そして、その隙を見逃さなかったイルカによって 「ああ、でも… カカシ先生が俺のペースで付き合ってくれるんなら、カカシ先生の恋人候補に立候補しても良いですよ?」 哀れ、カカシは玄関の外へと蹴り出されてしまった。 響いたガシャン、という鍵の閉まる音に我に返っても、時既に遅し。 後日、イルカの横には常に銀髪の上忍が佇むようになったとか…… |
不毛だ…
でも、こういう言葉の遣り取りって
実は結構好きデス
…お題を活かそうよ(頑張ります
20050709 UP