| 気の狂いそうな平凡な日常 |
| 朝。 鳴るはずの目覚ましよりも少しだけ早めに覚醒する意識。 あと少し、もう少しだけ…… まだ覚醒し切らない中、温かい布団の中でぐずりながら目覚ましが鳴るのを待つ。 ジリリリリリ… ジリリリリリ… 時間通りに鳴り響くソレに手を伸ばして止める。 ―――眠い。 出来ることならあともう少しだけ… そんな甘美な誘惑に負けそうになるのは訪れ始めた冬の足音の所為。 確実に冷え始めた室温に伸ばした腕さえ竦む。 しかし、 誘惑に負けてる暇はない。 イルカは思い切りよく布団を捲ると、真っ直ぐに洗面台へ向かった。 敢えて冷水で顔を洗うと、意識がしっかりと覚醒するのを感じる。 「よしっ!」 小さく気合を入れて、台所に戻る。 昨日の夕飯の残りを掻っ込みながら新聞に目を通して、食べ終わった食器を水の張った流し台に入れる。 そして、着替えて歯を磨く。髪を結い上げ、少ない食器を洗ってベストと鞄を持って家を出る。 「あら、イルカちゃん。相変わらず早いわね〜」 「あ、おはようございます」 「先生ってお仕事も大変そうね、昨日も遅かったんじゃないの?」 「でも、俺この仕事気に入ってますから」 「イルカちゃんらしいね。でもあんまり無理しちゃダメだよ?いってらっしゃい」 「はい、ありがとうございます。―――いってきます」 昼。 騒がしい喧騒の中を縫うように歩く。 アカデミーの裏手。そこがイルカのお気に入り。 表で騒がしく駆け回る元気な子ども達の声を聞きながらの昼食。 少しの休憩の後、職員室に戻って午前中に行ったペーパーテストの添削をする。 たまに見受ける奇抜な回答には思わず眉を顰めずにはいられないが、それでも確実に成長しているその姿は見ていて微笑ましい。 「お、イルカ。そろそろ時間じゃないのか?」 同僚に言われて時計を見れば、 「あ、ホントだ。んじゃ、ちょっと行ってくるわ」 「おう」 夕刻、イルカは受付業務に向かう。 手渡される報告書の全てに目を通し、記入漏れがないかをチェックする。 最後に一言、「お疲れ様でした」を忘れずに。 数ある業務をこなして、家路に着く頃には疾うに日も沈んでいた。 最近は尚のこと日の入りが早い。 身を切る北風に見舞われるまで、もうそんなに日数は残っていないんだろうなぁ。 通いなれた道を歩きながら、イルカはぼんやりと考えた。 冷え冷えとした夜は星明りがとても綺麗。 夜。 疲弊した身体で簡単な、遅い夕食。 作る気が失せてコンビニで買ってきた弁当で済ませた。 洗った浴槽に湯を張り、その中に体を埋めれば疲れが一気に霧散するかのように体の緊張が解れる。 濡れた髪を乱雑に拭きながら、冷蔵庫に手を伸ばす。缶ビールのプルタブを開ければ、プシッ、という小気味いい音がした。そしてそれをそのまま咽喉に流し込む。 冷たい液体が火照った身体には丁度いい。 何気なくTVをつけて、でも、それが何かしら意味を持つことはない。 つけたところで見てないことのほうが多いから…… 今日は久し振りに仕事を持ち帰ることがなかった。 だからこそ、余計にすることがない。 もうあとは寝るだけ。 そうしてまた明日に備える。 この繰り返し。 日々、繰り返しの毎日。 勿論、日々においてすべてが全く同じということはない。 でも根本的にはすべて同じ。 楽しいことがあって、大変なことがあって、 それでもちゃんと『生』きてきた。 ―――なのに、 「………カカシさん」 あなたがいない。 それだけでこの繰り返しの日常が苦痛になる。 色褪せて、何も感じない。 深夜。 窓の外に蠢く気配。 「―――ッ!?」 それに気がついて慌てるイルカに、 「ただいま、イルカ先生」 銀色の非凡な日常が舞い降りる―――― |
非凡な日常=
非常識なカカシのいる生活
20041004 UP