新しい世界





「イルーカせんせv」
「あ、カカシさん。おかえりなさい、早かったですね」

然も当然のように跨ぐ敷居。
そしてまた、それを然も当然のように受け入れる家主。

ふわりと香るのは、脂ののった秋刀魚の焼ける香ばしい匂い。
近付くにつれてその香りは強く、鼻腔をくすぐる。



今まで考えたこともなかった。
こうして、自分を出迎えてくれる人が現れるなんて。

今まで知らなかった。
こうして、明かりの点いた暖かい部屋で、暖かいご飯を用意しながら、自分の帰りを待っててくれる人がいる事がこんなにも幸せなことだっただなんて。

今まで思ったこともなかった。
自分もこうして、愛しい人を暖かい部屋で、暖かいご飯を作って出迎えたいなんて。



少しでも、喜ぶ顔が見たくて。

自分はとてもとても幸せだから。
今、こうして共に過ごしていることが、とても、とても幸せだから。
アナタにもそれを感じて欲しくて…



「見て、見て。イルカ先生〜」
「……?」


「――――わぁ…!凄い…、どうしたんですか?コレ」
「うん。任務先のね、農家の方に貰ったんですよ」

それは鮮やかな橙色をした大きな柿の実だった。
たわわに実ったのだろう事は容易に想像できる、それは立派なものが、一つ二つでは済まない数がビニール袋に溢れんばかりに入っていた。

「こんなに沢山は頂けないと一度は断ったんですけどネェ〜」

今日のオコサマ達の任務は庭掃除。
秋も深まり、すっかり枯葉に覆われてしまった庭を掃除するのが任務。勿論、ただの庭掃除ではない。とにかく、広い庭…というよりは既に一つの平原でもあった。
趣味が転じて色々な木々を植えたということだが、それにしても手広くやりすぎだろう、という感が否めなくもない。
…まぁ、しかし、修業の一環。子ども達の体力作りとしては充分過ぎる内容だった。


「確かに…二人で食べるにはちょっと量がありますね。後で、ご近所さんにもお配りしましょうか」
「そうですね、それがいいかも」

「にしても、随分と立派な柿ですね」
「うん。
――きっと甘くて美味しいですよ。だから飯の後にでも食べましょ?」

「そうですね、食後のデザートにでもしましょうか。もう少しで晩飯も出来るし…」
「今日は俺の好きな秋刀魚でしょ〜」
「ええ、よく分かりましたねー。実はいいのを貰ったんですよ」




然も当然のように交わされる会話。
アナタが『当然』を教えてくれた。それまで知らなかった、色んな事を。
感じることを、思うことを、沢山沢山……


だから、

俺は、

この、当たり前を大切にしたいです。





「―――ねぇ、イルカ先生?」
「なんですか」







「大好きですよvv」











今は冬真っ只中ですが、何か?

20060113 UP






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