| 回復する傷 |
| 「―――っ!!」 「――先生、――ルカ先生っ!」 「―――ましてっ、イルカ先生ッ!!」 ふと浮上する意識。 誰かが呼んでいる気がする。 何をそんな悲痛な声で読んでるんだ。 ……誰? 「目を覚まして下さいっ、イルカ先生ッッ!!!!」 俺を呼ぶのは―――― カカシ、さん…? 「イルカ先生ッ!」 ああもう、里を代表する「写輪眼のカカシ」が何を情けない。 何があったのか分かりませんけど、そんなに泣かないで下さいよ。 仮にもアナタは忍びなんですよ。そんなに感情を露呈してどうするんですか。 一体どうしたんですか? そう問おうとして、 ……声が出ない? まるで叫びすぎた後のように、咽喉が掠れて空気の通る音が虚しく聞こえるだけ。 「無理に喋らないで、咽喉に負担がかかるから…。 ―――ゴメンナサイ、イルカ先生。俺の所為でこんなことに……」 ああ、もう。だから、そんな悲しそうな顔しないで下さいよ。 俺はアナタのそんな顔みてる方がツライです。 「ゴメンナサイ、ゴメン。俺が、あなたのことを好きになったりしたから。 俺があなたのことを好きになんてならなかったら、あなたがこんな仕打ち受ける必要なんてなかったのに……」 ……仕打ち? イルカは一体自分の身に何が起こったのかを思い出すべく反芻した。 枯れて出ない声。 そして、改めて意識すれば身体に覚えのある鈍痛。 しかし、様子が少しばかりいつもと違う。 後に残っているのは身体の不調と微かに残る不快感。 いつも余韻として残るあの、温かな幸福感はどこにもない…… ああ、そうか――― 名前も知らぬ上忍に呼び出され、気がつけば組み敷かれていた。 理由はなんだっけ? あんまりにも下らなすぎて忘れた気もするけど… 確か、火影様に取り入るだけじゃなくて写輪眼のカカシまで手駒にするとは、何とか、だっけ?反論するのも馬鹿馬鹿しいような内容だった気がする。 元より一対複数ではコチラに勝ち目はない。 結局抵抗も空しく…… 俺、ヤローに犯されたんだ。 もっと憤っても、クサってもいい筈だが、案外すんなりと事実を受け入れてしまった。 きっと目の前でこの人が悲しそうな顔で泣くからだ。 泣きたいのはコッチな筈なのに、あなたがそんなに俺よりも悲しそうな顔で泣くから…… 「カ…カシ、さん」 「イルカ先生っ」 あなたなら読唇術にも長けているでしょ? だから、俺を見てください。 俺なら平気です。だから、もうそんなに泣かないで。 大丈夫だから、こんなのはすぐに治ります。これでも俺、かなり丈夫なんですから。 「……せんせぇ」 こんなのは全然平気です。 むしろ、このことであなたが俺のことを嫌いになってしまうほうが俺は怖いですよ? 「そんなことッ!」 ―――それは良かった。 良いですか、カカシさん。身体の傷なんていうのはある程度放って置いたって、勝手に治癒するんです。だから、そんなに心配する必要はありません。 それよりもね、怖いのは心の傷です。 心の傷はね身体に受けた傷と違って、目に見えない分、回復が難しいんですよ。 だから――― あなたが、俺の心の傷を癒してください。 涙で濡れる頬にそっとキスをして、イルカはそのカカシの背に腕を回した―――― |
20041013 UP