| 殴り合いの喧嘩 |
| 「イルカ先生、喧嘩しましょうっ!!」 「……は?」 息せき切って走ってきたかと思えば、いきなり何を言い出すのか。 あまりにあまりな、突拍子もない提案にイルカは一瞬本気で目の前にいる、本来であれば里の誇りと言っても過言ではない筈の、里屈指の実力者とも名高い銀髪の上忍―――はたけカカシの頭の中を心配した。 「いったい何なんですか、急に…」 さすがに人の往来のある場所で「喧嘩喧嘩」と物騒な事を騒いでくれるこの男を放置するわけにも行かず、とりあえずイルカが選んだのはアカデミーの裏庭。 「喧嘩は仲良しの証なんですっ!」 ……いや、普通に意味が分かんねーから。 さも当然とばかりにのたまうカカシに心の中でだけすかさず突っ込む。 どうにもこの男、すこしばかり常人と神経回路の造りが異なるようでしばしイルカを悩ませた。「好きです」「愛してる」なんてのはもう日常茶飯事、「結婚してください」と婚姻届を渡されたことすらある。 勿論、その場で笑顔で破り捨てたが。 いったい何をそこまで気に入られたのか、 はたまたコレは逆に嫌われているが故の嫌がらせなのではないか? と本気で悩んだ時期もあった。 しかしその旨をカカシとの交流が長い猿飛アスマや夕日紅に相談したところ、再三にわたるカカシの奇行は、あくまで「好意」なのだと言う。 『少しばかり変わっちゃいるが、お前さんを気に入ってるんだ。許してやってくれ』 そう言ってタバコを咥えたまま器用に笑った彼の人を思い出して、イルカは小さくため息をつく。 この人の『変わってる』レベルは「少し」なんて可愛いもんじゃないですよ、アスマ先生…… とは、思いながらも あくまで「好意」だと言いきられてしまうとそうそう無碍に扱う事も出来ず、それがまたイルカのため息の数を増やす結果となっていた。 「カカシ先生、『喧嘩』の意味分かってます?」 「いや、俺もね最初は喧嘩なんて良くないと思ってたんですよ!」 「はぁ…」 「でもね、世の中には『喧嘩するほど仲が良い』って言う言葉がありまして―――」 「いや、知ってますけど」 「え?イルカ先生ご存知なんですか?」 「……教師ですから、一応」 「イルカ先生は博識ですね〜…」 唯一伺える右目を弓なりにして笑うその顔は 嫌味でも何でもなく、ただ本心を語っているのであろうことを容易に想像させる。 「カカシ先生」 「はい?」 「あなたの言いたいことは何となく察しがつきました」 「じゃぁvv」 「でも、喧嘩はしません」 「え?」 「俺、喧嘩って言ったら基本いわゆる体を張った殴る蹴る系をイメージするんですよ」 「はぁ」 「でも、さすがに生徒の見本でなければならない教師である俺が何の訳も無くそういう暴力行為をするわけにはいきませんし」 「訳なら…」 「はいはい、人の話は最後まで聞く。 それに俺とあなたが殴り合いの喧嘩なんかしたら、俺なんて確実に入院送りですよ」 「それは加減を…」 「加減したら喧嘩にならないでしょ?」 「う…、それは―――」 言葉に詰まって、眉尻を下げるカカシにイルカはやはり小さくため息をついた。 正直このまま放って置いてもいいのだが、どうにもいつもそれが出来ない。コレがカカシを助長しているのかもしれないことも何となく理解してはいるのだが…。 「というか、カカシ先生」 「はい?」 「覚えてないんですか?」 「……?」 「中忍試験前のこと」 「え?」 「俺とガッツリ言い合いましたよね?ナルト達を推挙するしないで。 …というか、俺がカッツリ言われたんですけど。アレは喧嘩にならないんですか?」 「アレ、喧嘩なんですか…?」 ……。 イルカは覚えかけた眩暈を軽く頭を振ることで払拭した。 「世間一般ではそう認識されると思いますけど?」 「そうなんですか!」 「えぇ…まぁ…」 「そうか、そうなんですねっ!!」 あからさまに変化したその表情が何を物語っているかなんていうのは想像するに容易く、イルカは小さく息をついた。 とりあえずこれでしばらくは「喧嘩したい」などと馬鹿げたことは言わないだろう。 「カカシ先生、」 「はい?」 「確かに『喧嘩するほど仲がいい』って言葉はありますけど、俺個人としてはそれは無理矢理するものじゃないと思うんですよね。喧嘩しなくても仲がいいならそれに越したことは無いでしょう?」 「それは…そうですねぇ〜」 「というわけで、俺は敢えてカカシ先生と喧嘩しようとは思わないのでもうそんな馬鹿みたいなこと言わんで下さい。ちょっと嫌です」 「イヤ、ですか?」 「嫌ですね」 「わかりました、イルカ先生の嫌がることするのは本意じゃないので」 「ありがとうございます」 |
何だコレ?
おバカなカカシが書きたかった
だけなんだけどな
20110707 UP