親不孝





久し振りにここに足を運ぶ。

最近は色々と身辺が慌しかったから、つい数ヶ月前まではそれこそ毎週一回のペースを守っていたというのに、信じられない。

「――久し振り」

イルカはニコリと笑った。


「しばらく顔出せてなくてゴメン、…もしかしたらもう知ってるのかもしれないけど、俺も色々あってさ」


ここ暫くで己の身に降りかかっていた、なかば厄災ともとれる出来事を改めて思い返して苦笑する。本当に色々あった。本当に…







「好きなんです、イルカ先生っっ!!」
「……は?」







アカデミーで心を砕いていたナルトの上忍師として知り合った、はたけカカシ。その名は里は愚か里外にも知れ渡る程有名な、そして、優秀な忍び。
しかし、実際イルカがカカシを知ったのは火影からナルトの上忍師となる人の話を聞いた時だった。それまで全く知らなかった。同僚にはそのことに驚かれ、また同時にイルカらしい、とも言われた。どういう意味なのか、誉められているのか貶されているのか判断し難かったが、まぁ、誉められているのだろう、という方向で納得させたのはもう随分と前の話だった。

ナルトからも改めて紹介され、子どもたちを通してそれなりの付き合いはあった。しかし、いきなり呼び出されたかと思えば、


―――まさか告白されることになろうとは……


別にイルカは同性同士の恋愛に偏見があるわけではない。確かに里ではあまりない事ではあるが、一度外の任務に出てしまえばそのある種特異な環境とその心理作用など色々な理由も相俟って案外よくあることなのだ。
しかし、正直まさか自分がその対象になるとは、と言うのがイルカの最初の感想だった。しかも、里随一のエリートと称される男から。

カカシには悪いが最初は何かの冗談かと思った。
でなければ、何かの罰ゲーム。

そうじゃなければ、女性など引く手も数多であろうカカシがまさに『平凡』の二文字以外当てはまることもないだろう、何の突出しているところもない自分を選ぶとは思えなかった。別に顔が綺麗なわけでも、身体が華奢なわけでもない。むしろ自分よりカカシの方が色も白く線も細いし、その顔も整っていて精悍だ。




でも、




「本気なんですっ!――そ、その、冗談とかじゃ、全然無くて!!
男同士とかそーゆーの…気持ち、悪い…ですか…?やっぱり…?」

全血液がそこに集中してるんじゃないか、ってくらい、顔を真っ赤にして、
くしゃり、とそれを歪めて、

「好き、なんです…アナタのことが…」



本気なんだと、悟った。
形振りなんか構わず、本当に『気持ち』だけをぶつけてきた人。

紆余曲折、色々あった。
でも、

結局……







「絆されちゃったヨ、俺…」

イルカは苦笑した。
そして自分で言って照れたのか、鼻頭をポリポリと掻く。


「俺も、あの人が好きだから。これからずっと、出来る限り一緒に居たいと思ってる。だから、ゴメン…約束守れそうにない」



その時、
ふと馴染んだ気配にイルカは小さく笑った。
隠すこともせず、むしろ、自己をアピールするかのようなその気配。

「イルカせ〜んせ、何してるんですか…?」

後ろ抱きにされて、イルカは困ったように肩を竦める。どうにもこの上忍、独占欲が強すぎて適わない。しかし、それすらも甘美に感じる自分は相当にやられている、とも自覚しているイルカだった。

「――何でもナイですよ、暫くサボってたんで顔出ししただけです」

「あ…。ご両親、ですか?」
「ええ」

イルカの佇む先、里を支えた数多くの英雄が眠る慰霊碑。


「えーっと、俺、ご挨拶した方がいいですかね…?」
「え?」

「はたけカカシです。えっと、その…イルカ先生とお付き合いさせて頂いてます。絶対この人、幸せにして見せますからどうか見てて下さい」




慰霊碑に向かって手を合わせるカカシのその姿にイルカは独り目を細めた。そして、空を見上げて、カカシに気付かれないように笑う。





俺、この人と一緒に生きていこうと思うんだ。
孫の顔、見せてやれなくてゴメンな。でも俺、今、すごく幸せだから…



―――父ちゃん、母ちゃん……











こっ恥かしい程ラブラブ…

20050320 UP






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