・+*+*+・はっぴぃ じゃっくぼっくす・+*+*+・








「え…?
――あ、今日って……」
「9月15日、あなたの生まれた日です」


カカシのあまりの鈍さに、イルカはどうしたものかと思いつつ後頭部をガリガリと掻いた。
どうしてこんなにも己に関して無関心なのか。


「カカシさん、今月入ってすぐの事覚えてます?」
「え…?――なんだろう、何の事ですか…?」


「あなた、俺の誕生日は特別な日だと言ったんです」
「そうですよ?」

さも当然。
そんなカカシの様子にイルカは再び眩暈を覚えた。

「あんたねぇ…」
「はい?」

「あなたにとって俺の誕生日が特別だと言うなら、俺だって、俺にとってのあなたの誕生日は特別なんです」
「え?」

「俺が生まれなかったらあなたは俺に出会えなかった、って言うけど、それは俺だって同じです。あなたが今日この日にもし生を受けていなければ、俺はカカシさん、あなたに出会うことは叶わなかったってことです。
―――俺にとって、あなたの誕生日はとてもとても大事な日なんだ」

「……イルカ先生、」


「分かったら、とりあえず!コレ開けろっ!!」
「うわっ、はいっ!」


何でそんなに自分の誕生日に関心がないのかは知らない。
何かしらの理由があるのかもしれない、そして、それは自分が踏み込んでいい領域なのかどうかも分からない。

でも、

自分がカカシの誕生日を祝いたいと思う気持ちまで、拒否されるのはイヤだ。

カカシが自分の誕生日を祝ってくれたのが凄く嬉しかった。
そして自分がそうだったようにカカシにも喜んで欲しかった。

迷惑かもしれない、
余計なお世話かもしれない、

だから出来るだけ大仰にはせず、でも気持ちだけは伝えよう。
そう、イルカは考えた。




押しやられたプレゼント。
テーブルの中央にあったそれがイルカによってスライドし、カカシの腕の中へと落ちる。



「えーっと、じゃあ遠慮なく…」



少しだけ、戸惑いを含んだ声。
イルカにもほんの少しの緊張が走った。




リボンが解かれ、包み紙が丁寧に剥がされていく。

そして、

カカシが箱の蓋に手を伸ばした瞬間―――――――












「……ん!?」














勢いよく飛び出した小さなイルカが、
カカシの頬へとキスをした。

そして、







『誕生日、おめでとうございます。カカシさん』








イルカと、
プレゼントの中から飛び出した小さなイルカが同時に微笑む。


その瞬間―――




「…!」



カカシの目の前にいた筈のイルカが白煙と共に姿を消した。
そうして後に残ったのは……




「イルカ先生」
「はい」

「もしかしてずっと…?」



テーブルの上にちょこんと立つ小さなイルカが、
少しだけ照れくさそうに鼻の頭を掻きながら、僅かに頷いた。

そう、
今までカカシの前にいたのはイルカの分身。
当のイルカ本人は、小さくなってずっとプレゼントの中で息を潜めていたのだ。

「一体どうやって…」

カカシは不覚にもイルカの変化に一切気付かなかった。
こう言ってはなんだが、ある程度の術であればそれを見抜くだけの実力を兼ね備えているつもりだった。それが、いくら気を許している相手とは言え目の前にいた相手が分身であったことに全く気付かないとは、カカシにしてみれば不覚以外の何物でもない。

「本当は、全部自分で出来たら良かったんですけどね…。アスマさんと火影様に少し手伝ってもらいました」

「アスマと三代目が…?
…って、よく三代目が協力しましたね、こんなこと」

「まぁ…、三代目は偶然だったんですけど。
さすがに俺の術じゃカカシさんにはすぐバレるだろうから、どなたか上忍の方に手伝ってもらおうと思ったんです。で、こんな事頼めるって言ったらアスマさん位しか思い当たらなくて。
その…、一応俺たちの関係を知っている人ですし…?」

「あー…まぁ、そうですねぇ〜…」

「で、話をしようと思ってお宅にお邪魔したらたまたま火影様がいらしてまして…。『こやつだけじゃ心許なかろう』、と仰って」

「はぁ…ナルホド」


伊達や酔狂で火影の名を背負っている訳ではない、
三代目火影があの表向き好々爺の顔の裏に確固たる実力を兼ね備えているのはカカシも知るところ。しかし、それでも……



―――ちょっとフクザツ…



「え…?」
「いーえ、何でもないでーす」

ポツリと呟いたその言葉はどうやらイルカの耳には届かなかったようだ。



「それよりイルカ先生、いつまでそのサイズなんですか?」

テーブルの上に立つイルカはまさに手のひらサイズ。
コレはコレで可愛いとは思うのだが、出来る事ならやっぱり普通サイズで面と向かって話したり笑ったりしたい、とカカシは思う。
しかし、それに対するイルカの反応はと言えば、

どこかちょっとだけ気まずそうに…
ほんの少し笑うのだった。

「イルカ、先生…。まさか…」


咄嗟に最悪な状況を想像したカカシに、それを察したか今度はイルカが慌てた。


「あ、いや!違います!違います!解けないわけじゃないんです!!」
「じゃあ…」

「解けないわけじゃないんですけど…」
「……?」



「解くのは俺じゃなくて…、
その…カカシさんなら解術出来るだろうってアスマさんが……」



「あンの髭っ…!」



「――スミマセン…。」

「あ…、いや、別にイルカ先生は悪くないです。
ちょっと待って下さい、先に解いちゃいますから。少しの間、目を瞑っててもらえますか」
「はい」

小さなイルカをそっとテーブルから床へと降ろし、
素早く印を切る。
すると、白煙と共にカカシのよく知るサイズのイルカが姿を現した。

ひょこりとイルカの尻尾が揺れる。

「ありがとうございます、お手数おかけしました」
「いいえ、どういたしまして〜」

何事も無かったかのようにニコリと笑ったカカシは、
そのまま手を伸ばし、

「カカシさん…?」
「うん、やっぱりイルカ先生はこのサイズv」

目の前に座るイルカを、ぎゅうっと抱きしめた。




「ちょっ!カカ――」
「ねぇ、イルカ先生。ちょっとこのままで聞いて…?」

「カカシ、さん…?」

「―――今まで、俺にとっては誕生日なんて正直どーでもいい代物だったんです。強いて言うなら、『あー…また一年生き延びたかー』みたいに思うだけで、それ以下でもそれ以上でもない。
まぁそれでも、ガキの頃は早く大人になりたいと思ってた時期もありましたけどね。いつからかな〜、年を重ねる事がどうでも良くなってたんです…。イルカ先生にこんなこと言ったら怒られちゃうかもしれないけど、生きるのが苦痛の時期がありまして…」

「……」


耳元で囁くように語り掛けてくるカカシに、イルカは掛ける言葉を見つけられなかった。
ただゆっくりとカカシの背に手を回す。
理由は無い、ただ、何となくそうしたかった。


「とにかく生きてるのが辛くて。
でもね、染み込んだ習性とでも言いましょうか。そう簡単には死ねないんです、体が生きようとするんですね。俺の意思とは関係なく。
それが分かった頃からかな、『生き延びた』その事実をカウントする事すら億劫になっていったんです。そして俺の中で『誕生日』は消滅しました」

「……」

カカシの背に回したイルカの手に自然と力が入る。




「―――でもね、イルカ先生…」






「……今日は違ったんです。
イルカ先生の誕生日、俺にとっては凄い特別な日です。そしてイルカ先生が、俺の誕生日を俺と同じように特別な日だと言ってくれたの、凄く嬉しかった…」

ゆっくりとカカシがイルカから離れる。

そしてそのまま、まっすぐに澄んだ青と燃える焔がイルカを見つめた。






「ありがとう、イルカ先生。
―――今日は、最高の誕生日です」







*** *** ***







「――ねぇ、イルカせんせ」
「何ですか…?」


大の男が見つめあってるその光景はどこか滑稽で、
互いにふと我に返ったか小さく苦笑した後、二人は改めて食卓を囲んだ。
少し冷めてはいたが、気にしない。

特別何かがあるわけではない、いつも通りの食事。
他愛も無い話をしながら箸を進める。
そして、互いにお腹が満たされた頃合、

「今日は俺の好物ばっかりでしたね。これって…」
「そうです」

「ふふっ。イイですね、誕生日」
「…なに急に手のひら反してるんですか」

「俺があんまり興味ない感じだったから?」
「そうですよ、あんまり豪勢にしても迷惑かと思いましたし…」

「愛されてるなぁ〜」
「ナニ馬鹿な事…///」





「でも、イルカ先生」
「何ですか」





「キスされるなら、こっちの方が俺は嬉しいですv」





チョン、とカカシは己の唇を示す。
何を意味しているかなど言うまでも無く、





一瞬、イルカは目を見開き驚いたが

少しだけ顔を赤く染めながら、






カカシのそれにソっと自分のを落とすのだった――――






Fin.






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小話のつもりが長くなるし
コミカルに描くつもりが最後重いし
ぶっちゃけ、ちまいのが実はイルカ先生でした
ってのが書きたかっただけなんですけど
何はともあれ

カカシ先生、お誕生日おめでとう!!

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