| たとえばこんな愛し方 ― Side.I ― |
| 「俺と、別れて下さい ――― イルカ先生」 「…分かりました」 そうして、二人の関係はあっけなく終焉を迎えた―――― 「ちょっと、いいかしら?」 「紅さん…?」 それはアカデミーでの受付でのこと。突然の呼び出しに、イルカは内心首を傾げた。 今日の紅班の任務は既に終了している。自分の列では無かったものの、紅が先程報告書の提出を済ませている姿をイルカは視界の端で捕らえていた。 「どうかしましたか…?」 「イルカに聞きたいことがあるのよ。こんな時に悪いんだけど、ちょっと時間を割いて貰えないかしら?」 「あー、えっと…」 人影が幾分疎らになった受付、とはいえ担当である自分が外れていいものか。イルカが考えあぐねていると、 「イルカ、行って来いよ。 今はそんなに人いないし、混んで来るのはもう少し日が暮れてからだろ?」 そう言ってくれたのはイルカの横に座っていた同僚。確かに彼の言う通り、受付が混み合う時間はもう少し日が落ちてからが常だった。 イルカは一瞬の躊躇のあと、小さく頷いて紅を見る。 「――分かりました。一応まだ仕事中ですから、そんなに長い時間は空けれませんけど、短時間でも構いませんのでしたなら……」 「そんなに時間は掛からないわ。ちょっとね、聞きたいことがあるだけ」 紅が黒い豊かな髪を揺らしながら歩くその後ろを、イルカはやはり首を傾げならついて行った。一体、何の用だと言うのか。全くもって見当がつかない。 何か生徒についてのことだろうか。しかし、それならばわざわざ場所を移動する理由が分からない。余程のことでなければ受付でも会話は出来るハズ。 なのに、敢えて場所を変えたことが意図することは一体何なのか。 「……この辺でいいかしらね」 「紅さん、あの…?」 ハタ、と紅が立ち止まった場所は アカデミー校舎の裏手だった。滅多に人も通らない、木が鬱蒼と茂ったそんな場所。 どうして紅がこのような場所を選んだのか、イルカは益々混乱した。こんな所まで来て話すということは、一体どういうことなのか。 「イルカ、単刀直入に聞くわよ。 ―――あなた、カカシと別れたって言うのは本当なの?」 「え…?」 一瞬、イルカの反応が遅れた。 てっきり生徒の話かと油断していた、と自分で思わず苦笑する。 「どうなの?カカシに…その、言葉が悪いかもしれないけど…」 「――ええ、別れましたよ。 一応、カカシさんから別れを切り出された形になりますから、傍目に見れば俺が捨てられたことになるんですかね」 「………ッ」 紅が驚きのあまり目を見開く。 昇格してまだ間もないとはいえ、上忍のそんな動揺した姿にイルカは苦笑した。そんなに自分達の間柄は皆に知れ渡っていたのか、と改めて思う。 「何で…?あ、…こんなこと聞くなんて失礼よね。ごめんなさい。 でも、イルカがあの馬鹿に愛想尽かして別れるんなら分かるけど、何でカカシからな訳?こんなこと、私が言うべきじゃないのかもしれないけど…アイツはアンタと一緒にいて傍目から見てもよく分かるくらい幸せそうだったのに…」 「…そう言って頂けるのは俺としても嬉しいですね。でも、カカシさんはそんなに酷い人じゃありませんよ?愛想を尽かされることはあっても、俺があの人に愛想を尽くことはありません。――だって、俺、カカシさんのこと今でも好きですから……」 「何ですって?」 イルカの追い打ち的発言に思わず紅は眉を潜めた。 「……あの人は不器用な人なんですよ。いつかくるだろう別れに怯えて、その前に離れて行ったんです。理由がね、もし、自分が淋しいからとか言う理由だったなら俺だって引き止めたかもしれない。でも、違うんですよ…」 「……イルカ?」 「俺の為なんです。いつか、…カカシさんが最悪な状況で命を落とした時、俺が泣くといけないから。俺に泣いて欲しくないそうです、俺にはいつまでも笑っていて欲しいって言うんです。淋しそうな辛そうな、でもそれでも頑張って笑顔を作って…」 イルカの笑顔が僅かに歪む。 「俺ね、あの人といるとこう、何ていうか不思議と心が暖かくなるんですよ。あの人が俺に笑っていて欲しい、と思うのと同じで、俺もカカシさんにはずっと笑っていて欲しいんです。 …あんな顔、もう、二度とさせたくないから。だから、別れるしかなかったんです。それに、俺、今あの人を失ったら多分泣かずにはいられないと思うし…」 「アンタたち…」 「カカシさんが、俺たちが一緒にいることでいつも悩むくらいなら俺は離れてでもあの人の笑顔を守ってやりたいんです。例えそれがどれだけ辛くても…、あの人が、笑ってくれるなら、俺はそれでいいです」 「不器用なのね、イルカ。…アンタ、カカシと同じくらい不器用だわ。 ――いいえ、もしかしたらアイツ以上かもしれない……」 いつもの柔らかな笑顔に、つぅ、と流れた一筋の涙がとても痛々しくて、 何と言葉をかけていいのか分からなくて、 紅はせめても、と震える肩を抱きしめた――― |
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相思相愛の別れ
痛くてゴメンナサイ;;
20041105 UP