「……あなた、こんな所で何をやってるんですか……?」
「………」

予想外の人物に思わずカカシも戸惑う。

「任務は…、報告書は提出したんですか?
こんな所で蹲って、怪我か何かでも負われたんですかっ…?」

辺りに血臭の一切を感じないが、もしかしたら外傷ではなく動けないのかもしれない。緊張の所為か分からないが僅かに呼吸が荒いのも気になる。移動出来ないでいるという事は骨が逝ったのか、はたまた内臓をやられたのか。

「ッッ!」

心配になって蹲るイルカに向かって手を伸ばせば、肩に触れた瞬間イルカの身体がビクリ、と震えた。カカシの手を避けるように更に後ろへと後ずさろうとする姿に、カカシも反射的に手を避けてしまった。
カタカタと震えるイルカはどこか様子がおかしい。


「イルカ、せんせ…?」


さっきからこちらを見ようともしない。
いつものように自分を見て欲しいのに。笑いかけて欲しいのに。


「一体、どうしたんですか…?」


警戒を一向に解かないイルカに、カカシは一定の距離を開けたまま話し掛けた。
ねぇ、どうしたんですか。イルカ先生、俺を見て下さいよ。子ども達もあなたの帰りを心待ちにしてたんですよ?ゆっくりと、彼の身に何が起こったのかは分からないけど、出来るだけ優しく言い聞かせるようにカカシは言う。







「――――あ、なたは…」
「……?」


掠れたイルカの声。
いつもの快活な通る声は形を潜めている。
尋常でない様子のイルカにカカシは正直戸惑いを隠せなかった。

一体、本当に何があったの言うのだろうか。

しかし、次の瞬間、




「あなた、は…俺を、知ってるんですか…?」

「え?」



「俺は誰なんですか…?何もっ、何も覚えてない!!
何も覚えてないし、何も見えないッ!!どうして?何で俺はココにいるんですか?ココは何処で、あなたは誰ですか…!?
真っ暗で何も見えない!何も覚えてないッッ!何もッ、


―――――何も、分からないッ!!!」












カカシは目の前が真っ暗になるのを感じた――――――――







***   ***   ***







……最悪。
久し振りの外部任務かと思えば、もう里は目の前なのに。

俺、戻れんのかなぁ……嗚呼、目が霞んで来た。
間に合ってくれ、あと少しだけ、きっと何とかなる筈だから。
大丈夫、何とかしてくれる、きっと…

だから、

あいつ等を、あの人を、置いていくわけにはいかないんだ。
何とか持ち堪えてくれ、俺の――――――――













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目が見えないだけでなく
余計なオプション付…(汗

20050114